生理障害とは?病害虫ではない植物の不調の原因

 

生理障害とは

私たち人間も日常生活において様々なストレスを感じることがありますが、植物も同様にストレスを感じることがあります。

病気や害虫による生物的な要因ではなく、環境のストレスによって引き起こされる生長不良のことを生理障害といいます。

水や光、温度、養分などが適切な範囲を逸脱すると作物にとってストレスとなり、障害を引き起こします。

作物を育てていて元気がないとき、真っ先に病害虫を疑いますが、環境ストレスによる生理障害が原因かもしれません。

病害虫と生理障害は症状が似ていて区別がつきにくいです。

今回は生理障害の種類やメカニズムを詳しく解説していきます。

 

生理障害の種類

水ストレス:乾燥
一番身近な生理障害が水によるものです。
特に土壌の乾燥が原因で発生します。土壌の乾燥が進むと根の酸素供給が阻害され、根腐れや生育不良を引き起こし、やがて葉が萎れ、最終的には枯れてしまいます。
また、ピーマンやトマト、ナスなどは乾燥(高温とカルシウム欠乏も要因の一つ)により果実の尻部分が腐る尻腐れが発生します。
水ストレス:過湿
長雨や排水不良によって土壌中の水分量が植物の生育に必要な適正値を大幅に超えて過剰になると、根が窒息し酸素供給が阻害され、根腐れや生育不良を引き起こします。
過湿により葉の黄化や萎れ、新芽の生育停止などを引き起こします。
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温度ストレス:高温
気候変動・地球温暖化で年々平均気温が上昇しています。
高すぎる温度により高温障害や乾燥を引き起こし、葉焼けや枯れといった症状のほか、生育不良や奇形果の発生、尻腐れや芯腐れ、変色、果実の割れや着色不良などが起こります。
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温度ストレス:低温
熱帯や亜熱帯で育てられていた栽培作物は低温に敏感で、長時間寒さにさらされることで低温障害が発生します。
低温により地温が低下し、生育が抑制されたり、葉や花、芽先などの奇形化、花弁や葉、果実の変色、落葉、最終的には株全体が枯れてしまいます。
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光ストレス:強光
植物が強光にさらされると、葉の緑が薄くなったり白くなったりする葉焼けが生じます。果実表面の温度が高くなり組織が壊死し変色や軟化することもあります。
高温障害と同時に発生することがほとんどです。
光ストレス:弱光
野菜がよく育つためには、十分な量の太陽光が必要です。曇天が続き日射量が不足すると光合成を十分に行えず、根の活力低下や生育不良を引き起こします。
ハウス栽培では、ビニールなど被覆資材の影響で、より日射量が減少してしまいます。
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養分ストレス:養分欠乏・養分過剰
植物は三要素と呼ばれる窒素、リン酸、カリウム、微量要素である鉄やマグネシウムの欠乏や過剰によって生理障害を引き起こします。
また、肥料過多により肥料焼けを起こし、葉が枯れる、株が萎れるなどの生育阻害を引き起こします。
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生理障害の特徴

症状が対称性
生理障害の多くは、株全体や圃場全体、あるいは株や葉の左右に対して対称的に症状が現れる傾向があります。一方で病害虫はスポット的に発生し、不規則な広がり方をすることが多いです。
土壌環境との関係
水はけの悪い場所や、肥料が過剰なところで集中的に被害が出ている場合、生理障害が原因である可能性が高まります。

 

ストレスを利用した栽培方法もある

ストレス栽培と呼ばれ、ストレスをうまく利用して野菜の収穫量や品質を向上させる栽培技術もあります。

トマトに少ない水分で生長させる乾燥ストレスを与え、糖度と酸度を高めたり、野菜を暗黒下または弱光下で生育させて、黄化や徒長をさせる栽培方法があります。

ストレス栽培は共通して抗酸化物質の生成を促進させ、ポリフェノールやビタミンCのもととなるアスコルビン酸といった機能性成分を増やすこともできます。