【堆肥】牛糞・豚糞・鶏糞の違いと使い分けを解説

堆肥とは

堆肥は、家畜の糞尿や落ち葉、ワラなどの有機物を微生物の力で分解・発酵させ熟成させて作ったもので、土壌改良や作物の生長を助ける重要な資材です。

このページでは、動物性堆肥について詳しく解説していきます。

牛糞

メリット
有機物を豊富に含むため、土壌中の微生物の活動が活発化し、作物へ養分が供給されます。
牛のエサは主に牧草のため、糞には多くの繊維質が含まれます。その繊維質が土と土の間に入り込み隙間を作り、土壌の通気性が改善されます。
微生物を活性化させ、牛糞を分解すると同時にカチカチだった土をフカフカに変える働きがあります。
デメリット
牛糞堆肥を過剰施用すると主成分である窒素が過剰になり、植物の生長バランスが崩れ、病害虫による被害を増大させるリスクが高まります。
また、土壌中の酸性度(土壌pH)のバランスが崩れてしまいます。
牛糞堆肥の使い方
土壌全体に撒き、土の中に混ぜ込み、20~30cmほど耕し込みましょう。
施用量の目安
100㎡(1a)あたり200〜300kgが適量です。
施用時期
秋から冬にかけて。
春の植え付け1ヶ月~2週間前

 

豚糞

メリット
豚糞堆肥は、でんぷんやたんぱく質を多く含むため、肥料成分が豊富で即効性があることが特徴です。そのため、土壌改良材よりも作物の成長を促す肥料として使われることが一般的です。
リン酸や窒素を多く含んでおり、土の中で早く分解するため、作物へすぐに効果が現れます。
デメリット
カリウムやナトリウムなどの塩類を多く含む傾向があります。塩類集積を防ぐために施用後はたっぷりと水やりを行いましょう。
豚の飼料には銅や亜鉛などの微量元素が添加されていることあり、排泄物を通じて堆肥中にも含まれてしまいます。この銅や亜鉛が土壌に蓄積されることにより、作物に吸収され人体への影響の懸念や微生物のバランスが崩れ土壌環境の悪化を引き起こす可能性があります。安全のために、豚糞堆肥の連用は避けましょう。
未熟な豚糞堆肥はアンモニア臭や二酸化炭素、一酸化炭素などの有害ガスが発生することがあります。作物の根が焼けてしまったり、生長不良を起こす原因になりますので、完熟堆肥を選びましょう。
豚糞堆肥の使い方
土壌全体に撒き、土の中に混ぜ込み、20~30cmほど耕し込みましょう。
施用量の目安
100㎡(1a)あたり40㎏~60㎏
施用時期
秋から冬にかけて。
春の植え付け1ヶ月~2週間前

 

鶏糞

メリット
牛糞や豚糞に比べて窒素・リン酸・カリウムなどの肥料成分がバランス良く含まれており、肥料効果が高いことが特徴で元肥にも追肥にも利用できます。
特にリン酸を多く含み、実や花をつける作物に効果的です。
化学肥料と同程度の効果が期待でき、速効性が高く分解が早いため、土壌中の微生物により速やかに分解され、作物に栄養が供給されます。
デメリット
鶏糞堆肥は窒素を多く含むため、適量を守らないと過剰施肥になり、根を傷めたり肥料焼けを引き起こす可能性があります。
即効性が高い一方で効果が切れるのも早いという特徴があります。
鶏糞堆肥を繰り返し施用すると土壌がアルカリ性に傾きやすくなります。酸性の土壌を好む作物を栽培する場合は注意が必要です。

 

鶏糞堆肥の使い方
土壌全体に撒き、土の中に混ぜ込み、20~30cmほど耕し込みましょう。
施用量の目安
100㎡(1a)あたり20㎏~50㎏
定義項目3
秋から冬にかけて。
春の植え付け2~3週間前
鶏糞堆肥は4週間以上経過すると、ほとんど窒素が無機化してしまいます。

 

 

成分含有量例

  牛糞 豚糞 鶏糞
窒素(N) 1~2.5% 2~3% 2~5%
リン酸(P) 1~1.5% 2~4% 2~6%
カリウム(K) 1~2.5% 1~2% 1.5~3%
C/N比 10~20 8~12 6~8
※与えていた肥料や堆肥にする際に混ぜ込む副資材によって成分は異なります。

窒素

牛糞堆肥
約1~2%程度のものが多いです。
豚糞
牛糞より高め⇒「牛<豚<鶏」の順で窒素が多いとされています。
鶏糞
比較的高めで一般的に2~5%の窒素含有のものもあります。

リン酸

牛糞堆肥
他と比べて少なめで緩やかに供給される傾向にあります。
豚糞堆肥
鶏糞ほどではないですが、比較的リン酸とカリウムが多めの傾向です。
鶏糞堆肥
リン酸とカリウムが豊富で花や実をつける作物には特に効果があります。

カリウム

牛糞堆肥
肥料成分は控えめで主に土壌改良(有機物、排水性や保水性の改善)向きです。
豚糞堆肥
肥効は中~やや強めで肥料+土づくりのバランス型として使用できます。
鶏糞堆肥
速効性が高く、肥料としての効きが早いです。但し分解も早く、過剰施用や肥料焼けの注意が必要です。

 

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