農薬の剤型とは?分類と特徴を解説

剤型とは

農薬は有効成分が農作物に付着しやすくし十分に発揮させる効果や、農業従事者が安全に取り扱いやすいように有効成分に各種の補助剤を加えて、使用するのに適したさまざまな形状のものに製剤されています。

この製剤の形態を「剤型」といいます。

病気などで病院から出される薬の種類に錠剤や粉末、シロップなどがあるのと同じです。

農薬における剤型の形状は「固体」「液体」「それ以外」に分類され、そのまま使用するものと水に希釈して使用するものがあります。

 

固形で使用する剤型

粒剤
粒径が0.3~1.7mm程度の細かい粒状の固形剤です。製造方法により様々な形状があります。
根が薬剤の成分を吸収して効果を発揮します。散布後に水やりをすると効果的ですが、粒が崩れて薬剤が溶け出すまでに時間がかかるので、速効性に劣ります。
粉剤
45㎛以下の粉末状の製剤です。土壌に散布するものと葉や茎に散布するものがあり、非常に細かい粉末なのでドリフト(飛散)しやすい特徴があります。
DL粉剤は10µm以下の粒子を少なくして一般的な粉剤よりも飛散しにくくしたもの。DL=ドリフトレス(飛散が少ない)
FD(フローダスト)剤は平均粒径5μm以下と粒子を極めて細かくすることであえて飛散しやすくし、作物に均一に付着するように工夫した剤型です。
粉粒剤
粒剤と粉剤の中間の大きさで、ドリフトを減らす為に作られたものです。
粒径が大きい順に「細粒剤F」「微粒剤」「微粒剤F」の商品名に分けられます。
 
エアゾル剤
缶入りのスプレー剤です。内部のガス圧で薬剤を噴霧でき、主に家庭園芸用に使用されています。
くん煙剤
加熱することにより薬剤を煙状にしてハウス内等に散布するタイプの剤型です。
くん蒸剤
農薬原体を気体の状態で作用させて殺菌、殺虫、除草などの効力を発揮させる薬剤です。
 

 

液状で使用する剤型

水和剤
粉末状の製剤で水に溶かして使用します。希釈液を静置すると沈殿が生じます。
フロアブル
登録上は水和剤に分類される製剤ですが、水和剤が粉末状であるのに対して、フロアブルは微粒子にした固体の有効成分を水に分散させ白く濁った液体です。
ゾル剤とも呼ばれます。
SC剤は液体製剤のことであり、suspension concentrateの頭文字をとった略称でフロアブル(flowable)とまったく同じです。
ドライフロアブル剤・顆粒水和剤
登録上は水和剤に分類される製剤です。成分を界面活性剤、結合剤などを組み合わせて顆粒状に製剤したもの。
ドライフロアブルは、固体なので分離したり寒冷地で凍結したりすることはないです。
顆粒状なので粉立ちが起こりにくく、作業者が吸引するのを防ぎます。
水溶剤
水溶性の粉状や粒状などの製剤が完全に水に溶けるので希釈液の沈殿が起こりません。
顆粒水溶剤
水溶剤に集合剤などを加えて顆粒状にした製剤で、完全に水に溶けるので希釈液の沈殿が起こりません。
顆粒水和剤と同様、粉立ちが起こりにくく、作業者への安全性が高い。
乳剤
水に溶けにくい成分を界面活性剤や乳化剤を加えて水中で均一に分散するように安定化させた製剤です。
ほかの剤型に比べて危険物に該当するものが多いです。
EW剤
登録上は乳剤に分類される製剤ですが、成分を水溶性のポリマー等で被覆することにより水に分散させているため危険物に該当しない。
EWとは乳濁製剤(Emulsion oil in water)の略称です。
液剤
有効成分が水溶性のものを液体製剤にしたものです。原液または水で希釈して使用します。
マイクロエマルション剤(ME)
水に溶けにくい、または溶けない有効成分を少量の有機溶剤と界面活性剤で水に分散させた製剤です。
 
油剤
原体そのものが油状液体製剤のもの、又は原体を有機溶剤に溶かした油状製剤です。一般にそのまま用いる。
連作障害の一因である線虫害の土壌消毒などで使用されるD-D剤などがあります。
サーフ剤
形態や性状は油剤と同じです。
水田の田面に滴下処理し、有効成分が溶剤と共に水田全体に広がる製剤です。

その他の剤型

ペースト剤
糊状の製剤で、他の剤型に該当しません。樹木などの枝を切った際に切り口に塗布することで病原菌が入り込まないようにします。
 

 

展着剤

展着剤は、登録上の剤型名は「展着剤」となっており、剤型は決まっていません。

植物自体や駆除する病害虫へ、均一に薬剤が付きやすくために補助し、農薬の効果を発揮するように散布液に混入する薬剤です。

主成分は界面活性剤で、界面活性剤は「水と油」や「水と固体」などなじみにくいもの同士を結びつきやすくする効果があります。

 

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