
根が伸びる仕組み
根は植物が土壌から水や栄養分を吸収する器官で、根の生長は植物全体の健康に繋がります。
根の先端にある根端分裂組織という部分が活発に細胞分裂を繰り返し、根が伸びていきます。
根が伸びるためには土壌の状態も非常に重要です。
土壌が硬くなりすぎていると、根が自由に伸びることができません。また、水分過多や水分不足、栄養分が偏っている場合も、根の成長が阻害されてしまうことがあります。
このため、適切な土壌環境を整えることが根の健全な成長に重要であると言えます。
根が張らない原因
土質
硬すぎる土壌や水はけの悪い土壌は、根が自由に伸びることができず、根が十分に張らないことがあります。
特に粘土質の土壌は土の粒子が細かいため空気を通しにくく、水を含みやすいので水分が過剰に保持され、根が呼吸できず腐敗する原因にもなります。
一方、砂地の場合は、排水性は良いものの、イチゴやキュウリ等潅水を繰り返す作物の栽培では土が締まりやすく、土壌の酸素不足が起こり、なり疲れを引き起こします。
水分管理
過剰な水分は土が常に湿った状態になり、根が水分を吸収しすぎたり呼吸ができずに根腐れの原因となり、一方で水不足は根の伸長を鈍らせる原因になります。
肥料
肥料の過不足も根の成長を妨げます。
不足すれば栄養不足で根の成長が妨げられ、過剰だと肥料焼けの原因になります。適切な量と頻度で与えることが大切です。
温度
植物が最適な生育をするために必要な環境温度のことを生育適温と言います。
生育適温は、植物の種類によって異なります。
植物固有の生育適温を把握し、最適な栽培環境を整えることが、根の健康にも繋がります。
根張りがもたらす影響
栄養分吸収率向上
根の表面積が広がることで、土壌中の栄養素を効率的に吸収できるようになります。
水分吸収力向上
発達した根系は乾燥ストレスにも強くなります。
倒伏抵抗力の強化
しっかりと根を張ることで風や雨による倒伏を防ぐことができ、安定した生育に繋がります。
病害抵抗力とストレス耐性の向上
健全な根は、病害や気温の変化などのストレスに対して抵抗性を高める役割があります。
また、土壌内に存在する微生物や有機物の分解や栄養の循環が促され、より肥沃な土壌が維持できるようになります。
成長過程における根の重要性
育苗期
育苗時に根をしっかりと発育させておくことが定植後の活着促進に繋がります。
育苗時にバイオスティミュラント等の根張り剤を活用しても良いでしょう。
- バイオスティミュラントとは、高温や低日照などの「非生物的ストレス」を軽減する農業資材です。病気や害虫などの「生物的ストレス」から作物を守る役ものが農薬であり、役割が異なります。
定植後
苗の定植直後は、根を活着させる大切な時期です。
作物に合った適切なかん水量と温度管理を行い、初期生育を促進させましょう。
成長期
成長期は必要な栄養素の供給と適切な水分管理が大切です。リン酸は根の伸長を促進する三大栄養素の一つです。窒素やカリウムと合わせて、作物へ栄養を補給しましょう。
収穫期
果菜類の栽培では、実が多くつき収穫が進むにつれて草勢の低下や成り疲れが起こります。
果実の肥大が始まると、根への光合成産物(糖)の配分が減少し、根の働きが悪くなることで成り疲れが発生すると言われています。
リン酸肥料は根の伸びを助け根の生育を促進する働きがあるだけでなく、花付きや実付きが良くなる効果もあります。
作物が実をつけ始めると多くのリン酸が必要ですが、リン酸だけではなく、窒素やカリウムのバランスがとれた肥料を施肥しましょう。
発根促進剤について
活性剤(活力剤)タイプ
活性剤は植物の根の張りや成長を促す効果があります。活性剤は発根後にも効果が期待できるので、初期生育を順調に進めるためにも有効です。
ビタミンやアミノ酸などで発根を促すものや肥料成分が含まれているもの、病害虫への抵抗力を高めるものなど種類が豊富なので用途に合ったものを選びましょう。
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ホルモン剤タイプ
ホルモン剤は植物の生長ホルモンに作用して発根を促すものです。
挿し木の発根を促して成功率を上げるにはホルモン剤の成分が入った発根促進剤を使用することをおすすめします。
ホルモン剤は食用には使用を推奨していない商品も多く、野菜など食用の作物を育てている場合には使用方法等をよく確認してから使用するようにしましょう。