硝酸態窒素とは?

作物の栄養源としての硝酸態窒素

作物の成長には窒素・リン酸・カリウムという栄養素が必要です。窒素は葉や茎の成長に必要な栄養素です。

硝酸態窒素は窒素が化学反応によって酸化したものであり、土壌や水中など自然のあらゆる場所に広く存在しています。

作物は空気中の窒素を直接吸収することができませんが、この土壌に含まれた硝酸態窒素を根から吸収することで窒素を取り込んでいます。

農作物を栽培する際には肥料として施用されることも多く、硝安、硝酸石灰、硝酸加里、硝酸ソーダ、硝酸苦土などの肥料に含まれています。

 

硝酸態窒素の肥料としての効果

作物は窒素が不足すると生育が悪くなり、全体的に小さく育ってしまいます。 葉が黄緑色・黄色、茎が細いなどの症状は窒素欠乏の状態です。

硝酸態窒素は水に溶けやすく野菜類が直接吸収できるため、速効性が高く効果がすぐにあらわれます。

 

硝酸態窒素の過剰施肥による影響

・徒長しやすい

窒素が過剰に与えられると作物は徒長を引き起こします。

作物の葉が薄くなったり、茎や枝が伸びすぎてヒョロヒョロと細長くなり茎が安定せず倒れやすかったり、定植しても生長や実付きも悪くなってしまうことがあります。

 

・川や地下に溶け出しやすい

硝酸態窒素は土壌への吸着性が低く、過剰に施肥すると雨や水やりで圃場から硝酸態窒素が溶け出してしまい、地下水や河川水への流入にもつながります。

土壌から流れ出た硝酸態窒素は湖沼や海などの富栄養化を引き起こし、アオコなどが大量発生する一因となります。

※アオコ…小さな海藻が大量発生し、水面が緑色になる現象です。

 

・農作物への残留

窒素が過剰な土壌で栽培された農作物は必要以上に硝酸態窒素を吸収してしまい、硝酸態窒素が多く残留してしまいます。

中でも葉物野菜は残留しやすい傾向にあると言われています。

硝酸態窒素自体は有害なものではありません。しかし、人の体内で還元されて亜硝酸態窒素に変わるとメトヘモグロビン血症という酸欠状態になることがあります。

農作物の栽培に窒素は必要な成分ですが、適正量以上の化学肥料を使えば環境にも人の体にも影響を与える危険性があります。